
これから業界という荒海に出ていくために、みんなが波打ち際で戦の準備をしている。東放学園ってそんな学校じゃないですか。海に出るのはおっかないけど、僕自身もそこでがんばった時間は、微笑ましくも、厳しく、楽しかったですね。
「“ロックが自分の血液”みたいなところがある僕にとって、『BECK』は非常に記念碑的な作品になったんじゃないかと思います」
超大作SFシリーズ『20世紀少年』からバンドメンバーの友情を描いた『BECK』まで、ここ数年もハイペースで映画制作に取り組んできた堤幸彦監督。そんな堤さんが久々に挑んだテレビドラマが『SPEC』だ。今作は『ケイゾク』(TBS系)の世界観を受け継ぐ刑事ドラマ。ミステリアスな展開もさることながら、戸田恵梨香が演じる当麻紗綾の独特なキャラが注目を集めた。
「中谷美紀さん(ケイゾク)、仲間由紀恵さん(TRICK)に続いて、今回も“ああ、やっちゃったな”と(笑)。戸田さんにお会いして、案の定、そこに“予定調和を崩す目の光”みたいなものを感じ取ってしまったんですよ。別に役者さんの可能性を見抜く眼力があるとは思わないけど、僕は圧倒的に人間が好きだし、人間のヘンな面を見るのが好きだから。演技してもらううえで“この辺にしとこう”っていうリミットはないですね」
2011年2月上演の舞台『琉球ロマネスク・テンペスト』では、仲間由紀恵さんと再びコラボ。これまで堤さんは舞台演出家としてもコンスタントに活動を続け、演出力に磨きをかけてきた。
「ごまかしの利かない“ナマモノ”である舞台を常に経験しないと、どんなに映像が面白くても、中途半端な演出になりかねない。これからも映像と舞台の両輪で進んでいきたいですね」
現在は、自身のオリジナル企画によるアート映画など、映画監督として複数の作品を進行中。バラエティ番組から業界に入り、やがてミュージックビデオ、ドラマ、そして映画の世界へ。ロックの反骨精神をバネに、あらゆるメディアの壁を突破してきた堤さんに、エンタメ業界で生きるうえで肝心なことを尋ねてみた。
「とにかく“自分”だよね。自分は何が好きで、何を楽しむのか。これだけ趣味が細分化していくなかで、本当にひとり一個は、抜き差しならぬ自分をはっきり持っていること。“好きなものが見つからない”ってよくいうけど、それはちょっと違ってて。自分の住んでいる町のことでも、パチンコでも、あるいは味噌餃子でもいい。自分なりの視点がほしいなら、それは絶対目の前に転がってる。その感覚をずっと守っていくことが大事だと思います」