

プロモーション映像の制作では、アーティストの考えとともに、レコード会社の意図をくみ取ることも大切です。そのなかで“アーティストのスタイルや歴史を踏まえたうえでの表現”ができれば最高ですね。
田澤友和さんは、音楽に関わるさまざまな映像に携わるフリーのディレクター。田澤さんの仕事はいわゆるミュージックビデオの演出にとどまらない。海外のアーティストが来日すると、決まってインタビューやライブ映像がテレビなどで流れるが、こうしたオフィシャルのプロモーション映像の制作も、現在田澤さんの大きな仕事の柱となっている。
「来日アーティストが大物になると、インタビュー撮影できる時間も限られてきます。そんなときは、各テレビ局がそれぞれ撮影するのではなく、レコード会社の依頼を受けて僕が撮影し、それが各テレビ局に配布されるというカタチになるんです」
現場では、カメラマンへの撮影の指示といったディレクション業務のほか、アーティストサイドと日本のメディアとの間の橋渡し役となり仕切りもこなす。最近でもっとも印象に残っている来日アーティストはマドンナ。インタビュー撮影にあたっては、マドンナ専属の照明ディレクターと打ち合わせを行い、必要な明るさを得るために、取材場所の電気工事からはじめ、映像の質感すべてを統一したという。
「先方のスタッフと話せたことで、マドンナのような一流アーティストが、何にこだわって取材にのぞんでいるのかを知ることができました」
東放学園卒業後、制作会社に就職し、洋楽番組のディレクターを5年間務めた。このころに培った経験と人脈が、田澤さん独特の活動スタイルへとつながっていく。28歳からフリーとなり、数多くのミュージックビデオも制作。最近は渋さ知らズ、スーザン・ケイグルなどの作品も手がけた。
「アーティストが考えている方向性を知ることは大切だけど、それを100%表現してしまうとプロモーション映像として成立しないかもしれない。レコード会社の方向性も加味しながら、アーティストが本当に表現したいことを把握し、こちらから提案していくことも大事ですね。そんななかで、“アーティストのスタイルや歴史を踏まえたうえでの表現”ができれば、それが多分最高なのかなと思っています」
マドンナは田澤さんが生まれて初めてCDを買った洋楽アーティストだ。2006年の来日ツアー。ステージへあがっていく彼女の後ろ姿を、観客とは違う視点から見つめている自分がいた。
「“なんか、今いい感じの仕事してるな。幸せだな”って。あのときは本当に感動しましたね」