アーティストにとって心地よい環境を一番に考える。
絢香、浜崎あゆみ、アンジェラ・アキ、SMAP…チャートを賑わせる数多くのアーティストを手がけ、日本屈指のレコーディングエンジニアとして知られる松本靖雄さん。2007年には塩谷哲トリオ『Eartheory』で日本プロ音楽録音賞・優秀賞も受賞。創造的でハイクオリティーな音作りが高く評価された。
レコーディングエンジニアの仕事は、大きく分けて2つ。スタジオでマイクなどをセットし、歌や楽器を録音する“録り”とバラバラに録音されたトラックをステレオにまとめる“ミックスダウン”だ。 「録りに関しては、アーティストありきです。たとえば録音ブースひとつとっても、大きな部屋で歌うのが好きな人もいれば、その逆の人もいる。“本人がいかに気持ちいい状態で歌えるか”が前提で、その次が“いかにいい音で録れるか”なんです」
最高のサウンドをめざして心と体をベストに保つ。
ミックスダウンの拠点は、自身が所有するZeeQスタジオ。パソコンによるレコーディングが全盛の時代だが、ZeeQではデジタル機材は脇役、60年代生まれのヘッドアンプや90年代生まれのコンソールなど、アナログ機材を重視しているという。
「アナログは、季節や気候によっても微妙にサウンドが変わるし、人間的なんです。その日、そのときの音を残していける魅力がありますね」
“録り”とは打って変わって、ミックスは“エンジニア主導”。アーティストの思いを届けるために“感性のすべてをぶつけて”渾身のミックスを完成させていく。松本さんは、ミックス中にはお香を焚き、ふだんの食生活もオーガニック食を中心にするなど、心と体をベストに保つための努力を怠らない。
「そうすることで、音にもいい影響があらわれてきます。アーティストにとって、一番大事なポイントをまかされている以上は、風邪をひいているとか、体調が悪い…というのは、絶対にあってはならない、失礼ですからね。もうひとつ大事なのは、絶対に妥協しないこと。アーティストに対して“こうした方がもっといい”というアイデアがあれば、僕はお互いに納得するまで話し合うんです」
90年代には、電気グルーヴやスチャダラパーといった先鋭のクラブ系アーティストと交流。単なるエンジニアにとどまらず、楽曲制作の核にまで踏み込んだ音作りの体験は、現在の松本靖雄=サウンドクリエイターというスタンスとつながっている。最近では、独自にオーガナイズしたユニットQualia Ⅲにおけるプロデュースや、マスタリングも積極的に手がけている松本さん。音のアーティストとしての探求はこれからも続くに違いない。

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