演技の間合いまで考えながら役者のセリフを追いかける。
木村拓哉主演のドラマで、ここ数年の話題作といえば、『MR.BRAIN』と『華麗なる一族』。内山浩さんは、このふたつの大人気ドラマを手がけたベテラン音声マンだ。
「同じ木村さん主演のドラマでも、劇画調をめざした『華麗…』とマンガチックな『MR.BRAIN』では、音作りにも違いがあります。自然の音を取り入れたり、逆にエフェクトによってありえない空間を作り出すことで、その作品にふさわしい音へ仕上げているんです。泣かせたり、笑えたりする音の間合いなども、いつも監督と一緒に表現を考えています」
テレビドラマに限っていえば、スタジオでの収録から、BGM・効果音をミックスして仕上げるMAまで、内山さんがすべての指揮をとる。撮影現場では、画面の外から音を拾えるブームマイクのほか、ワイヤレスマイクなどを各所にセットし、役者のセリフを追いかける。内山さんはすべての音声をまとめるミキサー卓の前で、部下のスタッフに作業を指示していく。
「『MR.BRAIN』は大規模なセットでキャストも大人数。12~13個のワイヤレスマイクを使っています。昔よりもカメラの台数が増えたように、音もマルチ化が進んでいるんですよ」
もちろん、ただ声を録ればよいというのではなく、役者の吐息や間(ま)の表現までも捉えるような、シビアな作業。演者のクセやアドリブを受けてそのつど対応していかなければならない。
スタジオの雰囲気作りも含めてスタッフの仕事。
どんなドラマでも撮影現場は緊張感にあふれているが、とりわけ、内山さんにとって印象的だったのが『3年B組 金八先生』だという。
「最後の卒業式のシーンの台本はたった3行しかなくて、リハーサルもなし。本番で武田鉄矢さんにすべてまかされているんですよ。そんなライブなドラマの現場で、役者さんの一番いい演技を切り取るのですから、現場の雰囲気作りは、スタッフ全員の重要な仕事だと思います」
音声スタッフは現場での機材管理にはじまり、ブームマン、ミキサーへとステップアップする。ミキサーとして一人前になるために、昼ドラマなどの小さい現場から、経験を積んでいくという。
「25年前、この会社に入って一週間で僕は“ミキサーやらせてください!”って願い出たんです。専門学校を出てヤル気さえあればできると思うけど、僕は怖いもの知らずだったのかも(笑)。年を重ねると恥ずかしいこと、怖いことが増えてくる。若いうちに、どんどん前に出てほしいですね」

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